起業家精神?
アントレプレナーシップ(entrepreneurship)は、起業家精神と訳されることが多くあります。
シップ(-ship)というのは本来は「精神」とは訳さないはずですし、私が感じているイメージとはかなり異なります。
その精神という言葉にも、スピリット(spirt)とマインド(mind)があります。
スピリットとは精霊を意味し心身に染み付いた考えや行動、マインドは感情を含む思考、ハート(heart)は気持ちや感情になります。ちなみにソウル(soul)は魂やアイデンティティの部分です。
18歳から30社近くの起業や経営経験をしてきた私の感覚では、もし起業家精神というならば、「起業家マインド」という言葉のほうがイメージとしてはしっくり来ます。姿勢や心持ちといった状態です。
アントレプレナーシップは、精神というより能力
アントレプレナーシップは、起業した人だけに備わっていた資質のことではありません。
論文や統計としては、結果的に起業した人に備わっていた資質を分析したものになりますが、そもそも「起業した」とは結果であり、アントレプレナーシップは起業の前段階に存在していて、それが起業や創業という形で表されない場合もあります。
また、起業家精神に使われる「精神」という言葉は、それを高めるためには「鍛える」という言葉が似合っています。精神という言葉は、不屈の精神などと使われることも多く、理不尽さにも耐える修行のようなイメージを受けます。
そんな日本語訳をしてしまうことが、起業を遠ざけてしまっているとさえ感じます。
もし精神という言葉を使わないのであれば、能力が適切ではないでしょうか。
もしアントレプレナーシップが能力(スキル)であれば、開発ができるということです。
私はEQ(Emotional Intelligence Quotient、EIともいう)を開発する事業にも携わってきました。コントロールが難しいとされる感情でさえ能力(スキル)であり、意識をすることで身につけ自身を開発することができます。
アントレプレナーシップの、意味するところ
アントレプレナーシップという能力はどんなものでしょうか。
アントレプレナーシップの説明にはいろいろありますが、主に、「ゼロから会社や事業をつくる人」「イノベーションを起こす資質のある人」などと表現されますが、これらは企業活動における文脈です。
そもそも、人の能力をビジネスの視点だけで語るのは、少々もったいないと感じます。なぜなら、人の活動の中にビジネスというフィールドで発揮される能力があるからです。
そこで私はアントレプレナーシップを次のように考えます。
自らが描いた理想の実現に向け、
あらゆる方法や仕組みを用いて推進していく能力
自分で理想が実現された社会を具体的にイメージしていることが重要です。
その理想に対して、あらゆる手段やリソースを用いて実現していくために推進をしていく能力です。
それが起業や創業という仕組みを使うこともあれば、職場におけるプロジェクトであったり、地域の活動という仕組みであったりするかもしれません。
アントレプレナーシップは、個人の能力です。
つまりこれは、その人が生きていくチカラ、推進力そのものです。
アントレプレナーシップは、ノウハウではない
起業家教育=アントレプレナーシップではありません。
起業家教育は、起業から経営までのノウハウを学ぶものです。それはそれでとても必要なことで、アントレプレナーシップという点でも考え方を知っておく必要はあります。
しかし、手段や方法などを学んでも、なぜそれがしたいのか?どうしても自分がやらなければならないことなのか?という点で、自分自身の中で起業をするための理由を生み出ししていくことが必要となります。
もし自分でなくてもできるのであれば、起業をする必要はありません。
たとえば、オーソドックスなフランチャイズを運営することは、アントレプレナーシップとは直接繫がりません。
私は18歳で起業し24歳で創業しましたが、経営についてはほとんど知りませんでした。
もちろん個人事業主として10代から確定申告をしていましたが、必要に応じて身につけた手続きです。
創業をした後は組織が出来たので少しづつインプットをしていきましたが、それでも自分の想いを実現させるためにはどうしたら良いか?という問いを解決するために、方法を加えていきました。
つまり、起業家教育という手法やノウハウの伝授はあったほうが良いものの、アントレプレナーシップがなければ起業を選択しないこともありますし、起業したとしても独自性が発揮されないことになります。
もちろん、起業と経営の方法を知っていることで選択肢が増えるというケースはありますし、その後の苦労を考えると起業家教育は必要だとは思っています。
しかしそれ以上にアントレプレナーシップの育成が必要で、自らの中から生まれた想いが強いほど実現に向けての原動力が高まり、むしろ、手法やノウハウはそれを得意とする人を集めれば実現ができるはずです。
起業の話になるとすぐに出てくるのが、「Apple創業者のスティーブ・ジョブズのような起業家」という表現ですが、彼はアントレプレナーシップが備わっていたのであり、経営者としては落第点を出され会社を追われたたような人物です。(私は尊敬していますし、追い出した方が扱い切れなかっただけだと思っています…)
日本の教育は、どうしても手法やノウハウを教えたがるので、いま実施されている起業家教育のほとんども、そうした「会社ごっこ」ばかりです。
今年も小学生の息子を参加させ、親が後ろで観覧するというスタイルで見守っていましたが、本当にがっかりさせられました。
アントレプレナーシップ無しの起業家教育を進めたとしても、イノベーションを生み出せる人は出てきませんし、社会課題を解決するような事業は出てこないでしょう。
いろいろな本を見ても、アントレプレナーシップと起業家教育を混同しているものが多くあります。
もっと本当の意味でアントレプレナーシップが育ち、より良い世界をみんなで生み出せるよう、私もがんばっていきたいと思います。
コメント
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