【令和版】ビジョンとミッション、理念の立て方 〜実は混乱してる?2つの視点

メッセージ

起業はよく、山登りに例えられます。

どんな山を登りたいのか
なぜそこに向かう必要があるのか
どんな想いで上るのか
誰と上るのか
そこにはどんな景色があるのか

起業やビジネスではビジョンとミッションとバリュー、そして経営理念というものをつくることで、いろいろなことが明確になります。
むしろ、これが整理されていないと、地図もなくコンパスもない大海原を小舟で浮かぶようなものです。

しかし、このビジョンとミッションは、いつも言葉に振り回されて、誤解されています。特に最近では、社会課題解決やSDGsなどから混乱が顕著です。

毎年、起業前から起業後、経営者が新しい経営理念の策定することにも関わってきましたが、経営コンサルタントや創業の相談員という方に混乱させられています。

私は、スタートアップやベンチャーの経営をしてきましたし、全国規模で20年近く続いているNPOを創設しています。
経営理念の考え方や作り方も、この30年でかなり変わりましたし、ミッションによっては作り方もかなり異なります。

そこで、もう迷わないようにという想いを込めて、令和版SDGs時代としてのビジョンとミッションの整理したいと思います。

起業家、個人事業主、会社の経営者、副業や兼業、会社のメンバーであっても、言葉の違いで迷わないことを願って!

ビジョンとミッションの誤解

起業や経営で1番大切なのことは、ビジョンとミッションを定めることです。
そして、ブラッシュアップし続けることです。
これが全てといっても過言ではありません。

しかし、このビジョンとミッション。
言葉は同じでも、何を示すのかが、全く違っていることがあります。
特に、企業と社会的な活動において、それが顕著です。

本を見ても、それぞれに違うことが書いてあるように感じちゃいますし、
ネットを見ても、それぞれの視点で解説してあるので、ますます混乱します。

一般的には、これ加えてバリューという言葉もあります。
益々混乱しますよね。。。位置づけがよくわからない。

それぞれの言葉をソーシャルもベンチャーもたくさん経営してきた視点から解説しつつ、どういう位置づけなのかを整理していきましょう。

企業の言う、ビジョンとミッション

企業の多くは、企業の拡大が目的です。顧客を多く獲得し、利益や雇用を増やし技術の向上をします。

ですから、ビジョン&ミッションという言葉も、ミッション→ビジョンと、ミッションが先で上であるとされます。

企業のミッションとビジョンとバリュー

企業のミッション(コーポレート・ミッション)

企業がつくるミッションの多くは、人や社会の豊かさに貢献するために、自身が果たすべき役割(使命)が書かれています。つまり企業がその役割をする必要がある、存在意義でもあります。
たとえば、保有の技術を通じて社会を便利にしていくとか、食と通じて健康にして病気を無くすとか、そういった内容です。
これは基本的に変わりませんが、長期的には変わっていきます。

企業のビジョン(コーポレート・ビジョン)

いわゆるコーポレートビジョンと呼ばれ、ミッションで達成するために企業はどうあるべきかという姿であり目標のことをいいます。
短期的(5〜10年)くらいの目標なので、常に変わり続けて、また新たに制定されるものです。

企業のバリュー(コーポレート・バリュー)

企業のミッションやビジョンを達成させていくために、企業が持っている価値観や行動指針(いわゆるポリシー)のことです。
目的を達成すれば何でもOKというわけではないので、どういう倫理観や価値観で動くのかという基準になります。

企業のほとんどは自分が主体なので、社会よりも会社基準です。
ですから一般的に目標は会社の目標ですから、コーポレートビジョンとして語られます。
社会を語る時は顧客や市場というビジネスの対象として捉えるので、いわゆるソーシャルとは異なります。
つまり、自分ができることで何ができるか(インサイドアウト)で、やれることを続けた結果、どう社会が変わるか(フォアキャスティング)になります。

私が日本で、最初の音楽配信始めた事業は、「音楽を開放する【ミッション】」ことを通じ「多様性あふれる豊かな音楽市場の創造【社会的な目標】」に向けて「ミュージシャンとリスナーから、最も信頼される存在になる【コーポレートビジョン】」と掲げていました。

社会的な視点からの、ビジョンとミッション

企業や組織は、社会の一員ですから、経済や社会の一部であり、求められるものがあります。

最近では、SDGsなど、社会課題解決や価値創造のために、企業が何をすべきかが問われています。

そしてそれ以前より、NPOやNGOなどの社会的事業やソーシャルビジネスで活動する人は、社会が一番上にあって、それに対して自分たちは何をすべきかという視点で考えています。

ですから、ビジョン→ミッションという順番となり、ビジョンが一番上に描かれることがほとんどです。

社会的ビジョン(ソーシャル・ビジョン)

社会的ビジョンは、未来にどんな社会を創りたいかという青写真です。
自分達が達成したい理想の社会像、未来に見えている風景をビジョンと呼びます。

誰も取り残さない社会、多様な価値観を認め合える社会、などです。

社会的ミッション(ソーシャル・ミッション)

社会的ビジョンを達成するためにすべき行動が、ミッションです。
社会における自身の存在意義、使命などが表されます。

組織の社会的バリュー

組織が持っている価値観や行動指針が、社会的に見てどのような価値なのかということです。
たとえば組織を労働環境という視点でいえば、組織にいる人たちもまた、社会の一員であり、働くという環境そのものが社会的に価値のあるものでなくてはなりません。
社会の仕組みの中で組織がどのような価値を持つのか、という視点はとても大切です。

※なお、ソーシャル・バリューとは、社会的価値という意味を持つので、ミッションによって生まれる社会的価値という位置づけになります。この図全体ともいえますし、社会的ビジョンの一部ともいえます。長くなるのでまた改めて。

社会の変革が第一にある場合、社会的視点がまず最初にあり、それに対して自分たちに何ができるのかという考え方(アウトサイドイン)になります。
未来に描いた社会の理想像から、いつまでに何をすれば良いかという逆算(バックキャスティング)で事業を考えていきます。
例えば、コモンビートの場合、「多様な価値観を認めあえる社会【ビジョン】」を作ることを目的に、芸術(市民ミュージカル)に参加する社会人にD&I(ダイバーシティーアンドインクルージョン)を体験し実感する機会を提供【ミッション】」しています。

企業(組織)と社会的な視点のビジョンとミッションの関係図

ビジョンとミッションという言葉が、それぞれ上と下の両方で語られています。

ビジョンが上だ!
ミッションが上だ!

人によってこの違いが出るのは、社会的ビジョンと、企業(組織)のビジョンの位置が異なるからです。

社会的な事業に関わる人にとっては社会的な将来のビジョンを「ビジョン」と呼び、企業の人は組織の観点からコーポレートビジョン(企業や組織のあるべき姿ビジョン)を「ビジョン」と呼びます。

ややこしいですね。
1つの単語だけでは、何を言っているのかわかりません。

ミッションについては、ほぼ同じことを言っています。
企業にとっても、ミッションが向かう先は社会であって、それがSDGsが出てきたように、より鮮明に描かなくてはならなくなってきました。

また、企業の行動指針であるコーポレートバリューも、社会的な視点から影響を受けるようになってきています。
企業が社会の一員であるということをどれほど自覚しながら行動をしているか、ということを表さなければならない時代になってきています。

一般の起業や会社の多くは「手段ありき」で語られることが多くあります。
自分でできることを、どのようにお金に変えていくのか、という順序です。
だから社会的な目標は「後付け」になることが多く、これが「手段」と解釈され、社会課題を利用したビジネスにみえることがあります。
企業とソーシャルの連携がなかなか進まないのは、こうした手段と目的との相違が、お互いの不信感を生んでいるような気がします。

理念とは、これをすべて含めた表現のことをいう

これらをすべて整理して、ひとつの形で表現されたものを経営理念といいます。

どんな社会に向けて
誰に何を提供していく使命をもった組織で
どんなポリシーをもって
社会においてどんな存在でありながら
事業活動をどのようなポリシーで実施していくのか

それを整理するためにも、この2つのビジョンとミッションを使うとわかりやすいと思います。

これは常に自身に問いかけていくことで、洗練させていきます。

本当は何がしたいのか
本当の目的は何か
見えていないものは何か
見えていない効果は何か
見えていない誰かはいるか
自分は何者で何をしているのか・・・

そんな風に問いをしつづけています。

私もまだ30社を起業/経営しても、まだまだ磨き切れていません。
そしてこれからもずっと、磨き続けることになるはずです。

活動を見直す機会の参考にしていただければと思います。