段取りは、忍者のように

段取りの技術

段取りは忍者のように

段取りのできる人は、段取りをしていることを誰にも言いません。
オレ、段取りしてるんだよね。

と人に言うことはありません。
なぜなら、その必要がないからです。

人にこういうことを言うのは、人から何かを聞かれたいということです。
人に言うけれど、内緒・・・というのは、ちょっと性格が悪すぎます。(笑)
段取りという裏方をしていると、

誰か自分のことを見てくれているのだろうか
この苦労を誰かわかってくれるだろうか

という、孤独に耐えきれない寂しさが出てくるのでしょう。

段取りをしている人にそうした気持ちが湧かないわけでもありません。

でも、

段取りをしている人は、同情されたくて段取りしているわけではありません。

段取りをしていると、人に言えない情報をたくさん持つことになります。

人はコミュニケーションを取るときに、相手の状況に合わせて声をかけてきますから、
段取りしていることを知られると、段取りについて聞いてきます。

どう?段取りはうまくいっている?

そしてこう感じるのです。

段取りを裏側でやっていることを認めてくれて、そして声をかけてくれる。

なんて自分をわかってくれているんだ。

だから、みんなが知らないことを少し教えてあげよう・・・

はい、これが命取りになります。


こういう会話がそもそも生まれないよう、段取りをする人はあまり段取りの詳細を話しません。

こっそり、ひそかに、忍者のように動きます。

段取りをしていてると、秘密がいっぱい集まってきます。

全員に秘密
誰かに秘密
ある時点まで秘密
この情報まで秘密

サプライズで誕生日のお祝いをするのを考えてみてください。

内容もタイミングも、相手にも秘密で段取りしますよね。


本当は秘密など持ちたくないのですが、持たないと段取りができないことが多いので、必然と秘密だらけになります。


ただ、秘密という言葉で受け取ると、何だか自分だけが知っているという特別感に浸ってしまいます。

ヒ・・・ミ・・・ツ・・・ 何だか意味深で知りたくなりませんか?

だから、段取りをする時には、それらは秘密ではなくただの事実や情報として受け止めます。
秘密といいつつも、誰もが知っている情報かもしれませんので、1つの情報として扱います。

ですから、

段取りの情報収集の基本は、人のバイアス(見方、偏見)までもをすべて受け取らず、一つのタグ(ラベル)として情報に加えることです。

もちろん、原則はすべてが秘密として預かるという姿勢になります。
いちち、アレは秘密、これは秘密でないということを言いながら会話はできません。

その秘密の中から開示して良いものだけを、必要な相手に必要な量を開示するということになります。

私は会社の売買に何社も関わってきました。
自分の会社を何社も売り、他人の会社も買いました。
会社の売買に関する情報はとても膨大で、そしてとても繊細で、ちょっとした情報漏洩ですべてが崩れ去っていきます。
場合によってはインサイダー取引として捕まることもありますし、民事や刑事などの事件に発展することもあります。
それ以前に、やはり売り手と買い手がいて、そこにまつわるあらゆる思惑がうずめき、資産という形のものが取引され、それが市場に影響していくのです。

そして、必ず人がそこにいます。

買う人、売る人、そしてその事業に携わる多くの人たちです。
プールに一滴水をたらすだけで、プール全体に波紋が伝わるように広がり、そしてその情報は伝言ゲームで意図しない情報へと変貌していきます。

段取りのプロフェッショナルは、このような怖さを知っています。
逆にプロフェッショナルでない人は、秘密を持っていることに酔います。
その秘密を利用して、自分の価値を高めようとしたり、慰めようとしたりします。
秘密を明かして、「~さんも、たいへんだねぇ」などと労って欲しい人です。
段取りをしていることが苦痛だったり、段取りがやらされている場合には、そういった愚痴が出ても仕方ないかもしれませんが、それで段取りが崩れても自業自得ですね。

段取りに足音はいりません。

無音で粛々と進めることが必要です。

まるで忍者のように。


そのほうが、段取りをする側にとっても、都合よく仕事が進められるのです。