ものづくりの「プロダクトアウト」も「マーケットイン」も通用しない。これからは、マーケットアウトへのイノベーション

アントレプレナーシップ

「プロダクトアウト」が通用しなくなった、2つの要因

ものづくりと呼ばれる事業の多くは、現代においてビジネスモデルと呼べるものではありません。

 

A.
自分がいいと思っているから、誰かが買ってくれるだろう

B.
誰かが欲しいと言っているから、それを作れば買ってくれるだろう

 

Aの典型的な例は、伝統産業系のもの作りや、趣味で始めるカフェなどです。

Bの典型的な例は、受注体質の下請け産業です。

 

 

こうした需要と供給という意味では、仕組みとしては成り立っています。

でもそれのモデルは、現代では全く通じません。

なぜ通用しないのか?

 

 

それには2つの理由があります。

 

 

その1.インターネットやECなど、ITが比較を容易にした

 

それは、

選択肢のない中で選ばなければならかった時代で、

競合の現れにくい環境にあった

からです。

 

それを壊したのは誰か?

 

それは、インターネットなどの情報インフラ

そして、その情報インフラによって購買を可能にした物流インフラです。

 

情報があれば比較が可能ですから、

より良いもの、より安いもの、より自分に合っているもの

を探すことができます。

 

制限されている世界では、知らないことで欲求が高まらなかったり、欲求を諦めていますが、

欲求を無限に開放しても良い

という世界になってしまったのです。

 

そしてその欲求に対して、

世界のものが実際に届けられてしまう環境になった

のです。

 

情報インフラが機能しない環境ではまだ、こうしたモデルが通用します。

比較ができないですし、既存の選択を変えるコストのほうが高いという保守的な環境だからです。

でも、こうした地域も、変化するのは時間の問題です。

 

世代が変わればITリテラシーも向上し、物流はウーバーやドローンなどが運んでくれるかもしれません。

 

その2.物が豊富になり、ライフスタイルが変容した

 

モノのない時代は、選ぶものが限定されていました。

選択肢が少ないわけですし、それ以外のものを探すコストは高かったのです。

 

選択肢が狭いと、モノに合わせてライフスタイルを選ぶという、

モノが主で、自分が従

という関係でした。

しかし、物質が豊かになり選べるようになると、徐々にこの関係が変わります。

ライフスタイルを選べるようになった時代では、理想を求めるようになります。

 

プロダクト(ものづくり側)とマーケット(消費者)の、

主従が逆転してしまった。

つまり、

自分が主で、モノが従

 

その昔は、それが製品でなく、作品であっても買っていた時代もありました。

その時代に、それが作品としての価値を決めるのは、消費者ではなく品評会などであり、マーケットとは結びついていない世界です。

ものづくりの「こだわり」の追求を、評価してくれる絶対的な機能があり、それをモノサシにする消費者もいたのです。

 

いまでもこういうモノサシを大切にする人もいますが、少なくなりつつあります。

それは徐々にマニアの世界になり、多くの消費者は、ライフスタイルに合うというモノサシで選ぶようになり、そのモノサシは

情報や口コミといった、自分を軸とした相対的なモノサシ

に変わりつつあります。

 

価値に対する基準が、絶対値から相対値へと、大きく変化しはじめてしまったのです。

 

では、マーケットインは通用するのか?

 

プロダクトアウトに対して、マーケットインという言葉があります。

シンプルにいえば、買いたい人に合わせて売れば買ってくれる、ということになります。

 

ですから、欲しい人に合わせて商品を作れば売れるわけです。

 

いつの時代も、こうしたマーケットインをすれば、程度や期間は様々ですが、商売が成り立ちます。

ブームや流行というものは、「欲しい」という人の行動の集積です。

プロダクトライフサイクルでいえば、成熟期あるいは成長期であり、便乗して商売をすれば短期的には商売になります。

 

しかし、こうしたマーケットインにも、現代の人は飽き始めています。

そして、ブームなどと呼ばれる一時的な熱狂の時間は、日に日に短くなりつつあります。

今年のブームを、来年に持ち越すことをリスクに捉える人も多くなりつつあります。

 

私が経営や支援する企業の多くもですが、最近の中小企業は「ブームに乗ることを避ける」傾向にあります。

上場企業などは、株主からの圧力や目先の売上確保で選択せざるをえないこともありますが、そうした焼き畑的なマーケットインは、危険な時代になりつつあるのです。

 

つまり、プロダクトアウトとマーケットインは、考え方が似ています。

結局のところ、顧客が本当に求めているモノにはリーチできず、表層的な物質欲求を満たす以上のことはできないのです。

 

これからの「ものづくり」は、マーケットアウトで考える

プロダクトアウトも、ダメ

マーケットインも、ダメ

だとすると、何をすれば良いのか?

 

それは、

マーケット・アウト

です。

 

プロダクトだけでなく、プロダクトに付随するマーケットごと、市場に創出していく手法です。

 

もの作り産業には、次のような「もったいない状態」が多々あります。

 

製品の使う目的を、限定してしまっている

技術に偏りすぎて、使う人のことを考えていない

技術を追求しすぎて、使う人に不自由をかけている

製品ではなく作品として評価し扱うよう強いている

相手の要望に忠実に答えることが最優先になってしまっている

周辺産業の多くを他に委ねている

正確に伝えようとしすぎて、その製品が一体なんなのか伝わらない

 

きっと、ものづくり(プロダクトアウト)側の人には頭の痛い話でしょう。

うまみのあるビジネス(モデル)によって、他の産業が利益が吸い取られてしまうからです。

 

どういう人がその製品をつかい、どんな目的で、何を求めているのかという対極を捉える必要があります。

 

マーケットインの例で有名なのは、

ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではない

という話ですね。

 

ドリルの詳細な説明をしたとしても、使う人は買えません。

どんな穴を開けたいか、何をしようとしているのか

 

ということが目的であり、そのための手段として「ドリルが欲しい」というプロダクトを単語で発しているだけです。

目的を聞いたら、もしかしたらドリルは要らないかもしれません。

 

メーカーにとっては、欲している本当の市場がわかれば、そこに向けて製品を最適化できます。

そして、そこから、新しい使い方や最適化によって市場が拡大するようなマーケットごと創造してことができれば、そのマーケットまるごと先行者メリットを享受することができるのです。

これがマーケットインの本当の醍醐味です。

 

顧客が求めていることが何であるのか?

 

これまでの古典的なマーケティングでは、消費者の真意は掴めません。

日本国内ではプロダクトアウトとマーケットインを古典的なマーケティングでやっていたために、iモードを見たApple(ジョブス)がガラケーをスマホに変えてしまったのです。

 

 

他にも、ルンバやテプラなど、ものづくり企業でもマーケット創造をしていった製品はとても多くあります。

だから、どんなものづくり企業でも、マーケットアウトはできるのです。

 

 

マーケットアウトを実現するために最も重要なのは、感性だと考えます。

 

顧客の感性

それをメーカーがどのような感性で捉えるのか

どのような環境によって存在し、何を求めているのか

どこにベクトルが向き、どんな変化が生まれるのか

 

ここにひとつのイノベーションが必要になるのです。

技術革新のイノベーションではなく、

マーケットの捉え方とそれに対するプロダクトをマーケットアウトに考えるイノベーション(飛躍的変化)

がキーになります。

 

 

プロダクトアウトにこだわって、

このままレッドオーシャンで戦い続けるより、

 

マーケットアウトで、

ブルーオーシャンに船出して、

先行者利益を得ていきましょう。